「大切な人」 の、裏。
― 種類 ―
「入ります」
太い声とともに部屋へと入ってきたのは、ヴァレス神殿警備補助をしているバックスという騎士だ。よぉフォース、という声に手をあげる簡単な挨拶だけして、俺はまたリディアに向き直る。
「じゃあ、やっぱり?」
俺が改めて聞き直すと、リディアは俺をまっすぐ見つめたまま笑顔でうなずく。
「嫌いじゃないのよ? でも、大きいのが好きなの。グンと上を向いて力強くて、できたての種がたくさんで」
「へぇ、そうなんだ」
「剥いて食べると美味しいのよね」
「おい」
バックスの手が俺の肩に乗った。見上げると眉を寄せて悩んでいる顔が目に入ってくる。
「まさかとは思うけど、まさかだよなぁ?」
予想通りの言葉に、俺は冷たい視線を向けた。
「最近は色々な種類があるんだ。ひまわり」
それを聞いてバックスはブッと吹き出し、ごまかし笑いをしながら階段を上がっていく。近頃のバックスは、絶対欲求不満だと思う。不思議そうな顔を向けてくるリディアに、俺はただ苦笑して見せた。